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渡邉尚インタビュー(2/4)

渡邉尚インタビュー(1/4)

ノイズを取り除いた結果、自分と道具だけの関係になる

(尹)それは体の構造としてだけではなく、内的なものも含めてですか。

(渡)内的なものも含めてです。でもまずはやっぱりこの身体っていうのは一番社会に接している道具なので、理解できた方がいいと思うんですよ。調子悪くなったらお医者さん行ったらいいって思ってる人が多いけど、そもそも調子悪くなる必要ないじゃないですか。

(尹)ははは(笑)

(渡)いつも腰痛いって言ってる人でも、ああ、前屈したら股関節、骨盤倒して曲げられるようになって腰痛めないのにな、とか、いつも集中力続かないとか首痛いって言ってる人は首が前に出てるからしんどいんだろうな、とか。自分が楽な姿勢なら集中力は長く続くし、自分の楽な姿勢を知ってるか知ってないかで全然生き方が変わるじゃないですか。これ以上有意義な投資はないな、と僕は思ってるんですよね。

だから僕はテクノロジーと共存するのは全然いいけど、もっとターザンがスマホを持ってるぐらいの感じでいいんじゃないかな、って本気で思ってるんですよ。

少なくとも自分はできる限りそれに近づいていこうと思っていて、今この着てる服とかも彼女の手作りなんです。自分のものは少なくとも手の届く範囲の人に作ってもらう。僕はヨーロッパに行く時もこのナップサック一個でいくんですよ。軽いし畳めるし洗えるし。

自分のリソースをどこに割いているかというのは重要なんだなと思って。僕だったら、他のジャグリングとかジャグリング友達とかジャグリングの動画見るとかにはもう全く割いてないんです。それはノイズだなぁ、と思っていて。僕はもともとジャグリングを一人でずっとやってきたんです。だからあんまり他人のジャグリングを取り入れる必要がないんですよ。もちろんいいジャグラーっていうのは世界にたくさんいるんですけど、でも僕のジャグリングとは関係がないって感じですね。

ノイズを取り除いた結果、自分と道具だけの関係になるんです。そうするとそこから自分だけの動きっていうのがやっと思ってくるんですね。ノイズを入れすぎると、それが起こらなくなってくるんです。自分の身体と道具との関係に向き合ってると勝手にイメージが湧いてくるし、勝手に身体も整ってくるし、自動的なものなんですよね。

(尹)身に付けるものを厳選していく。それは住まいに関しても同じでしょうか。

(渡)ここは彼女のおじいちゃんの家なんですけど、家賃0円で住ませてもらっていて。ここを拠点にし始めてもう2年ちょっとぐらい経ってる。2016年の8月に家を解約して、そこからはいろんなところを泊まり歩いたり、野宿したりしてずっと家賃を1円も払ってないで生きてるんです。

今の人が採択してるルールも僕は尊重するし、土地を奪おうとかも思わないし、だけどその中で家賃を払わずにいたらどうなるだろう、っていう実験がまだ続いている感じですね。

いろんなライフスタイルを試したんです。全部自転車で移動するとか全部徒歩だけで移動するとか。公共交通機関に乗らないって決めてた時期もあった。いろんな国にツアーで呼んでもらってお金を使わないで回す、っていうのも全然生活できた。でもあんまり持続性ないなあと思ってじゃあ野宿。でも野宿もお金いるし持続性ないかなぁって。いろいろやってきた結果、身体のことを毎日やるのが僕の仕事かなって、本当に最近、思えたんです。

パフォーマンスは自分のメインの仕事ではない、って気づいたんですよ。ちょうど今朝フランスのロックダウンが発表されて、僕11月3日からフランスに行く予定だったんです。それももうなくなって、なんか、今時期じゃなかったんだろうな、って。

コロナになってオンラインレッスンを始めたらそれだけで生活できるようになりました。20代から50代、サラリーマンとかOL、一番小さい人で8歳の子とかも受けてくれて、僕はそれを定期的に週一で身体を見ていくんですよね。一人の体をずっと長期的に観測することができるようになってきて。僕が今まで得てきたこの身体の知見とかもシェアしてそのフィードバックによって僕はさらにこの身体を深く研究できて、すごく良いサイクルが最近出てきました。

(尹)オンラインレッスンでは、どのような内容を指導募集していますか?

(渡)主に倒立とストレッチですね。その中で僕は非常に強い満足感を感じてしまう。こんなに教えることが好きだったんだ、っていう。本当にこれ自分でも予想外でびっくりしてるんですけど。

渡邉尚インタビュー(3/4)

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