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渡邉尚インタビュー(4/4)

渡邉尚インタビュー(3/4)

みんな自分が人間だから同じことができる、って思い過ぎてる

(尹)身体に注目が行かないことの代償として、私たちはたくさんの概念や情報を受け取れるのだと思います。実際に体験してない物事についても知ったり、理解できたりするので、すごいことではありますが、自分の身体に関してはそういうわかり方はできないですよね。

(渡)そうなんですよ。他人の成功論とか、絶対に自分に当てはまらないのに。

これが平等の弊害だと思うんです。教育の機会が均等に与えられてるからと言って勉強しなかったら損という話でもない。

そんなことよりも、もっとみんな自分のことをやったらどうなるんだろう。

人間もやっぱり進化してるはずで、もしかしたら将来的にある人間同士では生殖行為ができなくなるかもしれない。ウマ系の人たち、チーター系の人たち、イルカ系の人たち、虫系の人たち、みたいな感じで分かれていくのも面白いなと僕は思ってるんですよね。そこまで分かれてくれたら悩む必要ない。今って自分が何者かわからないから悩んでるわけじゃないですか。

みんな自分が人間だから同じことができる、って思い過ぎてるんですよね。

例えば、歳を取ったら成人病になるから、糖尿病とかなるから、癌になるから、とか。あれも人によってそんな全部なれないですよ。糖尿病は、まずたくさん食べない人はならないじゃないですか。だから自分が全ての可能性を持ってる、何にでもなれるとポジティブにもネガティブにも思いすぎなんですよね。

(尹)ジャグリングに出会った時から極めるのではなく、ジャグリングはあくまで「探究すべき何かの入り口だ」と思っていたのですか?

(渡)初めは、とにかく7個ボール投げられるようになりたかったんです。これでプロになろう、これで食っていこうと思って大学を休学したんです。

そしたらある程度のところから上手くならなくなって、すごいしんどくなっちゃって、ボール触って投げようとしたら涙出てくるようになっちゃって。僕はジャグリングを続けたかったんだけど、続けられない身体になっちゃって。

その中でどうしたらいいのか、って時に横でブレイクダンサーたちが練習していて、気晴らしに一緒に練習するようになったんです。そしたら逆立ちの才能があったのか、上手くなってて、そこから徐々に徐々にジャグリングもまたできるようになってきて。

だから頑張ることは僕にとって害悪なんですよね。頑張るって言うことはそれは才能がないか認知が間違ってるって言うことだよ、って認識するんですよ。

人にストレッチや倒立を教える時もその人が一番やりやすい方法でしか僕は教えないんです。ジャグリングもたくさん投げるのが向いてなかったらさっさと3ボールにしたらいいじゃん、3ボールが多いんだったら2個でもいいじゃん、って思ってるんですよ。で最後一個のボールを手放したら人はダンサーになるんです。

だからダンスとジャグリングの境目もないし逆立ちとジャグリングの境目もない。

(尹)なるほど。認識が変わることでジャグリングそのものの定義も変わりますね。

(渡)やっぱりこうじゃないといけない、って思ってることが一番弊害なんですよね。だから体を鍛える時にこうじゃないといけない、と思って鍛えてる人って絶対痛めるんです。

現在の世の中にあるバレエとかブレイクダンスとかなんでもいいんですけど、その中に自分に適合するダンスがない可能性の方が、どう考えても高いですよね。

だからブレイクダンスをちょっと自分風にアレンジしたものじゃなくて、もう自分から起こして行った方が早いんじゃないか、って僕は思うんです。僕はそう言うふうにみんなが自分の身体から起こした動きとか生き方をするようになった世界が一番自然界に近いって思うんですよ。

四足歩行が動物のあり方である、って思うのがまず自分の固定概念だったんです。だって四足歩行は動物のものじゃないんですよ。蜥蜴と馬で全然四足歩行違いますし。トリなんて二足歩行だし飛ぶし、とかだから。

四足歩行も別に絶対じゃなくて、結局は動物っぽくしないといけない、とか、ジャグリングっぽくしないといけない、とか。それが一番到達するために邪魔なものなんですよね。

(尹)型とか決められた形が好きではないという印象を受けました。

(渡)だって、型っていうのは僕らが地層だとしてみんなの体が化石発掘場だとして、型はたまたま綺麗に出土された化石なんですよ。みんなそれのように掘ろうとしてる感じがするんです。

でもまだまだ未知の型が埋まってるはずなんですよ。人間の歴史なんてめちゃめちゃ短いじゃないですか。だからなんで短い人生を使って他人の、出土したものの真似をするんだろう、っていうぐらいの気持ちで僕は思ってるんですね。

もし世界がまだGoogleマップもなくてコロンブスもいなくて全然発見されてない状態で近くに未知の島があったら、そこぐらい泳いで行くんじゃないって僕は思う。僕は自分ができる型を発見する、そっちの方が遥かに人類に貢献もできると思うし、役割だと思うんです。

(尹)どうも、長い時間ありがとうございました。

渡邉尚のジャグリングはこちら(公開は終了しました)
https://cirquedumetaverse.com/index.php/226

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