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渡邉尚インタビュー(3/4)

渡邉尚インタビュー(2/4)

片手倒立をできる人を1万人増やしたい

(尹)教えることで、今の自分の最先端の研究テーマは出てきました?

(渡)最近特に熱いのは倒立ですね。倒立って難しいっていうイメージありますが、倒立ってめちゃくちゃ簡単なんですよ。バランス芸だから、バランス取れてたら力いらないんですよね。

日常生活で逆さまになること、ないじゃないですか。身体には定期的にショックを与えない固まっていっちゃうけど、逆立ちしたら手も上げるし四十肩とかもならない。教えてて分かったんですけど、逆立ちする上でいらない力を使わないようになって行ったら、だんだん背骨とか首の位置とか股関節の関係とか整ってきて、みんな体が長く緩くなってくるんですよ。みんな身体が綺麗になっていく。ますます逆立ちは上手くなりたいし、研究していっぱい教えて逆立ちのことを知りたい。

僕の理念としては人間の意識を持たないでジャグリングをしたらどうなるか、と思ってるんです。僕は手を足に足を手にしたい、逆転人間になりたいと思ってるんです。僕の進化は、そうなってるんです。みんなそれぞれ違う進化があるんですよね。あの人は馬タイプだな、とか、あの人は外に出なくて罠をかけたりしてるからクモタイプだなとか。みんなそれに合った生き方になって行かざるを得ないんですよ。クモがチーターの真似できないんです。

人権が平等とかの弊害だと思うんですけど、人権は平等ですけど人によって得意なことは違うじゃないですか。身体によってできることも違うんですよね。

できることをやったらいいじゃん、なんか人のことを真似しなくていいじゃん、って思うんですよ。自分の体のこと聞いたら自分がやりたいこともわかるし、自分の健康法も発見できるし。今の人生において自分の体以外に聞くメンターなんていないじゃん、って思うんですよね。

(尹)人間が二足歩行になった時点で、ある意味逆さまな世界を生き始めたのではないかと思います。身体の構造としては四足歩行をとどめつつ二足歩行をしている。身体の持っていたそれまでの名残と人間が獲得してきた能力や文化、技術のあいだで葛藤が生じている。だけどもう四足歩行に戻ることはできないから、葛藤にまみれていくことが社会性を獲得することにもなるわけです。

(渡)倒立って先入観がない方がうまくできるんですよ。社会が与えてくる社会的倒立みたいなノイズがあるんですね。

体操の人って前に寄りすぎてしまって手首に負担がかかってるんですよ。けど僕の倒立は持久系なので、かかとで立つんです。そうすると手首を傷めないんですよ。でも倒立のイメージがこう、って思っている人は認知がずれてる。

で、その認知を揃えていくことなんですね。体がどこに向いているかわかるみたいな。これが結構あらゆることに当てはまるなと思っていて。その人が何をしたいか、何を見てるのか、ビジョンが曖昧だとできないんです。

だから僕は倒立でも、どういう倒立がしたいの、ってよく聞くんです。

(尹)ただ倒立するだけなのに、その人の身につけた社会が出てしまう。

(渡)ワークアウト系の筋トレしている人の倒立っていうのは筋肉を見せたいので上水平のしんどい倒立とか好むし、無駄に力使いたがるんです。

あとは倒立でお尻あげられない人いるんです。倒立って最悪一番重い骨盤が手の上に載っていれば絶対立つんですが、できない人には自分が思っているよりやって、って言わないといけないんですよ。自分が知ってる世界やと絶対倒立できないから、もっと未知のゾーンがあるから、そこに行って、って言うんです。

子供が立った時に、立った!ってなるじゃないですか。倒立は、あれを大人になってから獲得する唯一の方法なんです。立てた、ってめっちゃ嬉しそうにするんですね。

子供って立った時になんかこう奇跡みたいな立ち方するじゃないですか。大人でも倒立したらそうなるんですよ。奇跡みたいな感じになるんです。

倒立は人間社会に共存できる一番動物的なことなんじゃないかと思ってるんです。日本に1万人ぐらい片手倒立をできる人を増やしたいですね。

渡邉尚インタビュー(4/4)

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